Quantcast
Channel: 阪急沿線文学散歩
Viewing all articles
Browse latest Browse all 2518

北原千代さんの『須賀敦子さんへ贈る花束』が刊行されました

$
0
0
 今年は須賀敦子さんが亡くなって20年。親族のお話によると、3月20日の命日には須賀さんが眠る甲山墓園のお墓には、ファンの方の花束や天国の須賀さんに宛てた手紙が置かれていたそうです。 没後20年を記念して、須賀敦子さん関する本が次々と出版されていますが、私が待ち望んでいた北原千代さんの『須賀敦子さんへ贈る花束』が思潮社より刊行されました。個人誌『ばらいろ爪』で詩人の感性で書き継いで来られたエッセイ集です。 北原さんは昨年、詩壇の芥川賞と言われているH氏賞を受賞され、一昨年には芦屋ルナホールで開催した「芦屋文学サロン 須賀敦子と芦屋・西宮」でもご講演いただきました。(写真は須賀敦子さんゆかりのカトリック夙川教会を眺めるレストランのテラス席で) 装幀をされたのはH氏賞受賞作品の『真珠川 Barroco』でも担当されたグラフィックデザイナー伊勢功治氏ですが、著書の『写真の孤独』の最初の章で、「写真の孤独―ジャコメッリと須賀敦子の出会いから」と題して、素晴らしい解説をされています。須賀敦子さんは『コルシア書店の仲間たち』の「銀の夜」で、<いちめんの白い雪景色。そのなかで、黒い、イッセイ・ミヤケふうのゆるやかな衣服をつけた男が数人、氷の上でスケートをしている。まんなかのふたりの人物は、たのしそうに笑いながら、ひとりはこちらを向いて、もうひとりは、横顔をみせ、ふたりのマントが、ふしぎな三角形をえがいて風に吹かれている。右端のずっとうしろに、これも黒い、先端にポンポンのついた毛糸の帽子をかぶった男が、ほとんどふたつ折れになった恰好で、むこうに滑っていく。>と紹介されているマリオ・ジャコメッリが撮影した一枚の白黒写真をみつけます。 須賀さんは被写体が若き日のダヴィデと彼の親友のカミッロにちがいないと思うのですが、伊勢功治氏はそこに須賀さんの創作が入っていると解説されています。もちろん、このお話についても北原千代さんは言及されています。 北原さんの須賀敦子さんへ捧げる13の花束。一つ一つの花束が美しく、また或るところでは、このような読み方をするんだと新たな視線を向けさせてくれます。須賀ファンには是非読んでいただきたいエッセイ集。この本を持って甲山墓園に行かせていただきます。

Viewing all articles
Browse latest Browse all 2518

Latest Images

Trending Articles