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Channel: 阪急沿線文学散歩
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ミステリーはマジックルームの写真から(島田荘司『ロシア幽霊軍艦事件』)

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島田荘司『ロシア幽霊軍艦事件』の発端は、箱根富士屋ホテルのマジックルームの暖炉の上にかかっている写真から始まります。 <すると支配人はどんな写真でしょうかと言った。顔には相変わらず笑顔があったから、私がマジックルームという部屋の、暖炉の上にかかっているという写真なのだと説明すると、とたんに村木の顔から笑みが消えた。> そのマジックルームは今もありました。<「あのう、マジックルームという部屋は、本当にこちらにあるんでしょうか?」私は訊いた。「ございます」すると村木があっさり言ったから、私はびっくりした。本当にあったのだ。どうしてマジックルームという名前なんでしょうか」そう尋ねた。「はい、私どものホテルに逗留なさる方、昔は長く逗留される方が多くてですね、そういう方はだんだんに退屈なさってくるんです。それで手品師を呼んで、暖炉の前で手品を見せたというのが名前の起こりです。」>   マジックルームはフロントのすぐ脇の階段の横にありました。そしてそのマジックルームの暖炉の上の壁にいっとき幽霊軍艦の写真が掛けられていたのです。<「はい、だんだんに私どものマジックルームの暖炉の前が、皆さま不思議なお話とか、怪談を持ち寄ってお互いに披露し合う場所のような感じになってまいりましたもので、ホテルの方も、じゃあ不思議な写真を用意しようかという話になりまして、とっておきの不思議な写真を額に入れて、暖炉の上の壁に掛けたようなんです。> 暖炉はマジックルームの入口から入って右手の新聞架けの後ろにありましたが、ちょっと見た感じは暖炉に見えません。   最初はフロントの前にある暖炉のことかと思いましたが、違っていました。  しかしゼクシィネットに掲載されていた昔のマジックルームの写真の暖炉は、現在残されている意匠にこった暖炉とは異なり、位置も違います。いつ改装されたのでしょう。 http://zexy.net/wedding/c_7770003535/blog/article/72028.html   <マジックルームは、六つのスペースから成り立っていて、それぞれに応接セットが置かれていた。間に仕切りはない。> この広いスペース、現在は絵画などの展示などにも使われています。   <「今石岡君から概略を聞きましたが、そういう不思議な写真が、この暖炉の上のあそこにかけられていたんですか?」御手洗が、暖炉の上の高い壁を手で示した。村木は頷いている。 その暖炉はちょっと変わった造りをしていて、タイル貼りだった。数センチ四方の細かな正方形のタイルを貼ったもので、私はこんな意匠の暖炉を初めて見た。火が入る下の部分には茶色のタイル、その上の煙突を兼ねているのであろう装飾壁の部分には青のタイルが貼られて、こちらには赤と青の鯉の絵のタイルも填まっている。> そのタイル貼りの暖炉です。下の火口の部分はセメントで固め、閉じられており、とても暖炉には見えませんでした。   しかし下から首を突っ込んで天井を覗くと、暖炉の上部は煙突で屋根の上までつながっているようです。 <今かかっている富士山の写真も、暗い絵柄のせいで、何が写っているのか最初は解らなかった。遠すぎるのだ。やはり額は目の高さがよい。>  暖炉の上の白い漆喰壁に富士山の写真がかかっていました。ここに芦ノ湖に浮かぶロシア幽霊軍艦の不思議な写真があったというのです。内陸の高地にある芦ノ湖に軍艦などありえません。しかし、船が出現しただけでなく、ホテルの従業員は荷物運びに駆り出され、従業員の一部は軍艦の内部に入り豪華な内装に触れたというのです。あとは小説でお楽しみください。

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