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Channel: 阪急沿線文学散歩
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久坂葉子の堂島の喫茶店「ムジカ」、現在は三宮で営業

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富士正晴らが創刊した同人誌『VIKING』のメンバーの溜まり場的存在だった喫茶店「ムジカ」には、久坂葉子も足しげく通っており、富士正晴の『贋・久坂葉子伝』にもしばしば登場します。 その場所を特定できそうな表現が『贋・久坂葉子伝』にありました。<久坂葉子は脚がひきつるような思いで、ムジカにかけつけた。銀行の角を廻り、東へ折れ、するとムジカの扉がひらいて、背の高い男が出てくるのが見えた。> 堂島の毎日会館のあたりにあったということでしたが、詳しい場所を知りたくて堂島のパボーニを訪ねました。そこで偶然昭和40年ごろムジカに通っていたというお客に出会い、昔の地図も見せてもらって、その場所が特定できました。昭和40年の堂島の住宅地図です。黄線で囲ったところが昔の毎日新聞社、毎日放送などがあったところで、現在は堂島アバンザとなっています。 富士正晴はこの毎日新聞でアルバイトをしていたっことから、近くのムジカがVIKINGの溜まり場になっていました。 更に地図を詳しく見ると、小説に出てきた銀行が、黄線で囲った第一銀行であることがわかり、その角を東に入った赤線で囲んだところに「ムジカ」と書かれているのを見つけました。現在の航空写真です。黄線のところが堂島アバンザの東側にあるパボーニ。赤丸のところが、「ムジカ」があった所ですが、第一銀行は現在みずほ銀行となり、その堂島グランドビルが大きくなっており、堂島グランドビルの東端に位置します。「ムジカ」はその後、紅茶専門店となり、毎日ホールの地下に引っ越し、更にアクア堂島フォンターナの3Fに引っ越していますが、2013年に堂島本店を閉店。 本社を芦屋に移され茶葉・周辺商品の販売に集約されたそうですが、神戸・元町に2号店をオープンされているとのことで、訪ねました。 場所は三宮センター街、一貫楼のある筋です。ビルの2階。2階の扉を開けると、紅茶販売のディスプレイが。店の内部はこんな様子です。 堂島時代の店内は『贋・久坂葉子伝』では、店の内部の様子が次のように描写されていました。<外から入ると、ムジカの中はひどく暗かった。蛍光灯が陰鬱な冷たいものを、奥深い部屋の中に充満させているように、その時の気分で、思えたのだ。その濁ったもやもやした空気の奥に、何かを見つめている田村の後ろ姿が見えていたが、屈託がこりかたまった形と見えるのだった。そしてその時、久坂葉子の体を重く浸しているのも屈託だった。LPは、激しいヴァイオリンのひびきをふりまいていた。> 当時は暗い店内で、クラッシックがかかっていたようですが、三宮の店は明るい店内に様変わり。頼んだのは玉子サンドのモーニングセット。ついてくる紅茶は伝統の「堂島ブレックファースト」、ミルクティーに向いているらしく、たっぷりミルクもついてきました。食べログの評価も3.51と高く、満足できたモーニングセット。堂島にあった久坂葉子の通った「ムジカ」は三宮で評価の高いティーハウスに生まれ変わっていました。

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